九州大学病院のがん診療

口腔がん

放射線治療

当院では、口腔がんに対する放射線治療はX線を体の外から照射する、体外照射を行っています。体外照射には手術後に行う術後照射と、放射線治療で根治を目指す根治照射がありますが、根治照射の根治率は十分ではなく、原則として手術を主体とした治療になります。

口腔がんの手術後、リンパ節転移の個数が多かったり、がんのリンパ節外への浸潤が見られたりして、再発リスクが高い場合は、術後照射の適応になります。総線量50~60グレイ(放射線量の単位)を25〜30回(1日1回、週5回、5〜6週間)に分けて照射します。毎回の治療の際に同じ体勢を保つために、放射線治療中にはプラスチック製の固定具で頭から肩を固定します。また、強度変調放射線治療(IMRT)という技術を用いて、放射線の分布を最適化し、できるだけ副作用を減らすように心がけています。一方で、高齢者や内科的併存疾患などにより手術困難な場合は60〜70Gy程度(30〜35回程度)の根治照射を行っています。いずれも可能であれば抗がん剤を併用しています。

放射線治療の副作用は治療期間中から直後に現れる急性期有害事象と、治療終了後から数カ月後以降に現れる晩期有害事象に大きく分けられます。急性期有害事象としては、照射野に一致した皮膚炎・脱毛・口腔粘膜炎、悪心、嘔吐、全身倦怠感、味覚障害、唾液分泌障害などがあります。味覚障害や唾液分泌障害は回復が遅く、半年〜2年程度かけてゆっくり回復しますが、放射線量によっては回復が不十分なこともあります。晩期有害事象としては粘膜潰瘍や顎骨壊死などがあり、照射した範囲内の抜歯や、喫煙・飲酒・刺激物の摂取はできるだけ行わないようにする必要があります。