九州大学病院のがん診療

卵巣がん

内科的治療

上皮性卵巣がんは他のがんに比べて化学療法(抗がん剤治療)が効きやすい種類のがんであると言われています。卵巣がん化学療法において、現在標準治療とされているものはパクリタキセル+カルボプラチン併用療法(TC療法)です。これに投与基準を満たしていれば新しく効果が示されたベバシズマブを追加します。化学療法は大きく分けて以下の4つに分類されます。

1)術後初回化学療法

術後に初めて行う化学療法は寛解導入療法と補助化学療法に分けられます。寛解導入療法とは初回手術の後に残存した腫瘍病巣を消失させるために行われる化学療法です。補助化学療法とは術後に残存腫瘍を認めないものの、再発の予防を目的として行われる化学療法です。

2)術前化学療法

進行症例で一期的な腫瘍切除が困難と判断される場合や、合併症のため腫瘍減量を目指す手術は侵襲が大きく危険が伴うと判断された場合などに、手術に先立って行われる化学療法です。

3)維持化学療法

長期生存を目的として行う化学療法です。しかし、早期がんでも進行卵巣がんでも有用性の結論は得られていません。

4)二次化学療法

再発時や初回化学療法に抵抗を示す場合に行う化学療法です。二次化学療法の選択にあたっては、初回化学療法終了後から再発までの間隔がその奏効率に相関することが知られています。6ヵ月以上の再発であれば薬剤感受性再発と呼ばれ、初回化学療法と同様の化学療法で効果が期待できます。一方、6ヵ月未満の再発や初回化学療法で効果がなかったものを薬剤抵抗性再発と呼び、こちらは標準的な化学療法が確立されていません。様々な抗がん剤が試されていますが、いまだ満足できる効果を示しているものはありません。イリノテカン、トポテカン、リポゾーマルドキソルビシン(ドキシル)、ゲムシタビン(ジェムザール)などの薬の効果が期待されていますし、その他にも新しい薬の治験が行われており、今後新たな治療方法が確立されることが期待されています。術後初回化学療法のコース数は、進行期やがんの組織型を考慮して行われますが、一般的に6コース行います。ただし、ⅠA、ⅠB期でかつ組織学的な分化度が高分化であれば化学療法を省略することもあります。若年に多い組織型である悪性胚細胞腫瘍も化学療法の対象で、特に抗がん剤が良く効くがんです。組織型として多いのは未熟奇形腫、未分化胚細胞腫などであり、卵巣悪性腫瘍の約5%程度を占める稀な腫瘍です。上皮性卵巣がんと異なり、ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン併用療法(BEP療法)が行われ、70〜80%程度の奏効率が得られると考えられています。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
寛解導入療法 : がんの症状や徴候を軽減、消失させることを目的とした抗がん剤による治療法
胚細胞腫瘍 : 精子や卵子になる前の細胞から発生した腫瘍の総称。良性腫瘍と悪性腫瘍がある
奇形腫 : 胚細胞腫瘍のひとつで良性に分類される腫瘍