九州大学病院のがん診療

子宮がん

外科的治療

子宮頸がん

子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)

子宮頸部レーザー蒸散術または子宮頸部円錐切除術を行います。

ⅠA1期

原則として単純子宮全摘出術を行いますが、将来の妊娠を希望され、子宮温存が必要な場合は子宮頸部円錐切除のみで経過をみることもあります。単純子宮全摘出術では右図のように子宮頸部支持組織を子宮にごく近い部分で切断し、腟壁はほとんど摘出しません。すなわち良性の子宮筋腫などに行う子宮摘出の方法と大差ない、身体に優しい術式で治療できます。閉経後であれば、同時に両側の卵巣、卵管も切除します。リンパ節の摘出を行う場合もあります。大きくおなかを切らずに、腹腔鏡を用いて手術を行う場合もあります。

ⅠA2期

準広汎子宮全摘出術を行います。この術式は子宮頸部支持組織の切除範囲が単純子宮全摘出術と後述の広汎子宮全摘出術の中間の術式で、基靭帯の一部および少量の腟壁を子宮とともに切除します。よって、広汎子宮全摘出術で認めるような術後排尿困難をきたすことは少ない術式です。

ⅠB1期〜ⅡB期

広汎子宮全摘出術を行います。本手術では右図のように、子宮頸部支持組織を骨盤壁に近いところで切断し、腟、基靭帯(排尿神経を含む)を広く切除し、同時に骨盤リンパ節の郭清および傍大動脈リンパ節の生検を行います。そのため術後に排尿困難(神経因性膀胱)が生じたり、足がむくんだり(リンパ浮腫)することがあります。当院では靭帯切除の際、可能な例では排尿関連神経を残す「神経温存術式」を積極的に行っています。開腹後、最初に行う傍大動脈リンパ節の生検で転移が明らかな場合、術式の変更やそのまま閉腹して放射線治療に移行することがあります。また、ⅡB期の場合は手術療法でなく、放射線療法を選択することもあります。

当院では、1)初期の浸潤子宮頸がんの患者さんに対して将来の妊娠を可能とする広汎ないしは単純子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)や、2)骨盤リンパ節の摘出を最小限にするためのセンチネルリンパ節検査などの国内でも少数の施設でしか行われていない最先端の医療に取り組んでいます。子宮頸がんの低侵襲手術に関しては、2018年にLACC trialの結果が報告され、低侵襲手術の方が開腹手術より骨盤内再発率が高く、予後不良であるとの報告がなされました。しかしその後、腫瘍の大きさが2cm未満であれば低侵襲手術と開腹手術で生存率に大きな差はないとの報告がなされており、当院ではそのような条件を満たした場合には、腹腔鏡下手術も行っております。

子宮体がん

単純子宮全摘出術、両側付属器摘出術が基本術式でそれに加えて、正確な進行期決定のため、骨盤および傍大動脈リンパ節の郭清または生検を行います。進行期・組織型によっては腸を覆っている脂肪の網(大網)を切除することもあります。お腹の中に病気が拡がっているような場合は腸管切除も含め、卵巣がん根治術に準じた拡大手術をすることもあります。また、初期子宮体がんに対しては子宮頸がんと同様にセンチネルリンパ節検査および腹腔鏡やロボット(ダビンチ)を用いた低侵襲手術を行っています。

用語解説

基靭帯 : 子宮頸部の周囲にある組織。子宮を支えている。
センチネルリンパ節 : がんの転移をおこす際に、一番最初に到達するリンパ節
低侵襲 : 身体にかかる負担が少ない