九州大学病院のがん診療

子宮がん

放射線治療

子宮がんに対する放射線治療は長い歴史を有しており、その有効性は広く認められています。一方で、消化器症状(腹痛、下痢、下血)、皮膚障害、骨髄抑制などの色々な副作用も知られており、むやみに放射線治療を行うことはしません。放射線治療は基本的に照射野内のがん細胞にしか効果がないので、他の治療法である化学療法や手術療法と組み合わせて活用していく必要があります。ここでは、子宮頸がんと子宮体がんに対する放射線治療について概説します。

子宮頸がん

子宮頸がん(特に扁平上皮がん)に対する放射線治療の効果は高く、手術療法に匹敵する治療成績が得られています。しかし、それぞれの治療方法には利点と欠点があり、治療法の選択に際しては検討が必要です。当科では治療前に一度入院して頂き詳しい検査を行った後、その患者さんにとって手術療法と放射線治療のどちらがより良いか、十分に検討してから患者さんとも相談のうえ治療法を決定しています。治療は原則的に外部照射(体の外から放射線を照射)と腔内照射(子宮腔内及び腟内に線源を挿入して照射)を組み合わせ、1ヶ月半から2ヶ月かけて照射を行います。抗がん剤の1つであるシスプラチンの毎週投与を併用した同時化学放射線療法は、主治療である放射線治療の効果に抗がん剤の上乗せ効果が期待でき、放射線治療単独より有効とされています。当科でもこの治療法をいち早く取り入れて治療を行ってきました。また最近では、進行子宮頸がんに対する重粒子線治療への紹介も積極的に行っています。いくつかの条件がありますが、主に腫瘍径が大きく、通常のX線では局所の制御に困難を有する症例などを対象に、佐賀ハイマットで行う重粒子線治療へのリクルートも行っています。また、手術後の病理組織検査で、子宮外への病巣の広がりやリンパ節転移が判明した場合に行う追加の放射線治療を術後照射と言いますが、近年では抗がん剤による術後化学療法を行うこともあります。再発の場合も化学療法と放射線治療のいずれか(場合によっては手術療法も考慮されます)が選択されますが、どちらを選択するかは患者さんごとに十分に検討して、相談のうえ決定しています。放射線照射の方法として、特に有用と考えられる場合は、コンピュータの助けを借りて腫瘍のみに放射線を集中して照射する強度変調放射線治療IMRT)や、がん組織に直接放射線源を刺入する組織内照射が行われることもあります。術後照射をIMRTで行う臨床試験(JCOG1402)も行っており、副作用の低減に努めています。また貧血があると放射線の治療効果が落ちることが知られているため、放射線治療中は、積極的に輸血を行い貧血の治療を行います。

子宮体がん

子宮体がんに対する治療法の第一選択は外科手術です。これは、子宮頸がんに比べ放射線感受性が低いと考えられることが関係しています。しかし、高齢や合併症などの理由による手術不能例に対しては放射線治療が選択されることもあります。根治的放射線治療は、全骨盤外部照射(体の外から放射線を照射)と腔内照射(がんの存在する部位の子宮腔内及び腟内から照射)を組み合わせることがほとんどですが、子宮頸がんの放射線治療のように標準的照射方法の指針は確立しておらず、患者さんごとに全身状態の評価を考慮し照射法を検討しています。また、手術後の病理組織検査で子宮外への病巣の広がりやリンパ節転移が判明した場合に、術後照射を行うことがあります。この場合、術後追加療法として放射線治療と化学療法のいずれが良いかについて、患者さんごとに全身状態やそれぞれの治療法の副作用等を総合的に検討して決定しています。

用語解説

骨髄抑制 : 抗がん剤などによって骨髄内の正常血球細胞の産生が障害されること
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
化学放射線療法 : 抗がん剤と放射線を組み合わせて行うがんの治療方法
重粒子線治療 : 重粒子線を使い、がん細胞だけを集中して照射する治療。
強度変調放射線治療 : 腫瘍の形状に合わせた線量分布を形成することで、正常組織の被ばく線量をより低減し腫瘍部分に集中的に照射することができる照射方法
IMRT : 強度変調放射線治療。腫瘍の形状に合わせた線量分布を形成することで、正常組織の被ばく線量をより低減し腫瘍部分に集中的に照射することができる照射方法