九州大学病院のがん診療

  1. HOME
  2. 九州大学病院のがん診療
  3. 造血器悪性腫瘍
  4. 薬物治療(悪性リンパ腫)

造血器悪性腫瘍

薬物治療(悪性リンパ腫

悪性リンパ腫には非常に多くのタイプがあり、患者さんごとに症状や経過が大きく異なります。治療せず経過観察できるものや胃のピロリ菌を減らすことで良くなるものから、日単位で急激に病気が進行し、強力な抗がん剤治療を速やかに行う必要があるものまで様々です。九州大学病院では悪性リンパ腫を治療するうえで、最も重要な組織診断について、リンパ腫に詳しい久留米大学および九州大学の病理医と、臨床医・画像診断医が参加する月例検討会を行い、それぞれの患者さんにとって最適な治療法を選択するようにしています。上記のように多彩な悪性リンパ腫ではありますが、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに大別されます。病気の場所が体のごく限られた部分にある場合(病期Ⅰ)には、放射線治療を選ぶこともありますが、病気が広がっている場合には抗がん剤治療が選択されます。長らくホジキンリンパ腫の代表的な抗がん剤治療はABVD療法(アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)でしたが、近年ブレンツキシマブベドチン(CD30という抗体に抗がん剤が結合した薬剤)が初回の治療から使えるようになり、特に進行期の若い患者さんでは、ブレオマイシンをこれに置き換えたA+AVD療法が用いられるようになっています。非ホジキンリンパ腫の抗がん剤治療としてはCHOP療法(シクロフォスファミド、アドリアマイシン、オンコビン、プレドニゾロン)が標準的です。非ホジキンリンパ腫にはB細胞系とT細胞系があります。B細胞系リンパ腫の場合、腫瘍細胞の表面にCD20という抗原がでていれば、リツキシマブという抗体をCHOP療法とともに用いること(R-CHOP)で治療効果を上げることが期待できます。ABVD療法やR-CHOP療法は、初回治療を入院で行った後は、多くの方が外来で継続されています。九州にはT細胞系リンパ腫の1つである、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)の患者さんがたくさんおられます。この病気はウイルスが感染したT細胞が腫瘍化することでおこります。残念ながら、この病気は抗がん剤だけで治すことが難しいため、全身状態が良い患者さんでは同種造血幹細胞移を行っています。さらにモガムリズマブという、ATLの腫瘍細胞表面にあるCCR4抗原を標的として、腫瘍を攻撃する抗体治療も期待されています。
このような治療で病気が十分に小さくならない場合や、一旦良くなっても再発した時には、別の抗がん剤を組み合わせた救援治療を行います。さらに、年齢が若く(65歳以下)、心臓や肺、肝臓、腎臓などの機能に問題がない患者さんでは、自己造血幹細胞移植(自分の造血幹細胞を保存しておいて、大量の抗がん剤治療を行う方法)や、同種造血幹細胞移植(大量の抗がん剤・放射線治療のあとにドナーさんの造血幹細胞を移植する)を行うことで、病気の治癒を目指します。以上の様に、同じ悪性リンパ腫と診断されてもタイプによって治療法が異なり、同じタイプでも病気の広がりや年齢、全身状態にしたがって治療法が選択されます。最近では、B細胞リンパ腫が生きていくために必要なシグナルを標的とした薬剤(ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬など)やがん抑制遺伝子などに働きかけてがん細胞の分化や自滅(アポトーシス)を誘導する薬剤(ヒストン脱アセチル化阻害薬など)、新しい免疫細胞治療(免疫チェックポイント阻害・キメラ抗原受容体導入T細胞など)が次々と登場してきており、悪性リンパ腫治療の選択肢は確実に増えてきています。主治医の先生とよく相談しながら、最適な治療をお受けください。

用語解説

悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期
同種造血幹細胞移植 : 大量の化学療法や全身への放射線治療からなる移植前処置のあとに、ドナーから採取した造血幹細胞を移植する方法
免疫チェックポイント阻害剤 : 免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性化させる。