九州大学病院のがん診療
肝がん
外科的治療
はじめに
肝がんは臓器別癌死亡の男性で第5位、女性で第6位であり、特に西日本はその好発地域として知られています。治療法としては⑴外科的切除、⑵肝移植、⑶ラジオ波焼灼、⑷肝動脈塞栓療法、⑸リピオドールを用いた抗癌剤注入療法、⑹化学療法、⑺アルコール注入などがあります。これらの治療の中から、肝がんの大きさ、場所、肝機能に応じて患者さんに最も適した治療法を選択して治療にあたります。そのためには、外科、内科、放射線科、病理部の連携が最も重要です。九州大学病院では定期的に各科の医師が集まり、患者さんの病状に合わせた治療法を決定するようにしています。
外科的治療法としては⑴肝切除と⑵肝移植があります。
肝切除
当科における肝切除総数は2019年末で3,264例となり、全国的にも極めて高い評価を頂いています。肝臓は血流の多い臓器で手術中に大量出血をきたしやすい手術ですが、近年の手術手技の進歩や周術期管理の改善により極めて安全な治療法となってきました。さらに2016年4月からほぼ全ての癌に対して腹腔鏡下肝切除術が保険適応となりました。九州大学病院では少しでも患者さんに負担の少ない治療をと心がけており、積極的に腹腔鏡手術を取り入れています。
肝移植
肝移植は他に救命できる治療法のない末期肝不全患者さんに対する究極の治療法です。2002年よりミラノ基準(3cmまでの大きさなら3個以内、もしくは5cmまでの大きさなら1個のみ)という基準内のみに限ってではありますが、肝がんに対する生体肝移植が保険適応となりました。当科では2020年3月末までに累計254例の肝がんに対する生体肝移植を行い、移植後生存率は1年92.0%、3年83.8%、5年80.5%、10年74.6%という極めて良好な治療効果をあげています。
用語解説
ラジオ波焼灼 : 腫瘍の中に電極針を挿入し、高周波(ラジオ派)により誘電加熱し、癌を凝固壊死させる治療法
リピオドール : リンパ造影剤の薬品名
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法。
周術期管理 : 入院(手術前)-手術-退院(術後の開腹)一連の流れ。