九州大学病院のがん診療

肝がん

放射線治療

原発性肝がんの放射線治療には通常分割照射や、体幹部定位放射線治療、粒子線治療があります。それぞれの患者さんの状況に応じて、最適な放射線治療法を選択しています。

通常分割照射

門脈や静脈内へ浸潤している場合で、高齢者や内科的併存疾患によって手術等他の治療が困難な場合、あるいは肝門部などのリンパ節転移の場合は根治的に通常分割照射を行っています。総線量50〜60グレイ(放射線量の単位)を25〜30回(1日1回、週5回、5〜6週間)にわけて照射します。その他、骨転移で痛みがある場合など、症状緩和目的で30グレイ/10回程度の照射も行っています。

体幹部定位放射線治療(定位照射)

腫瘍の形に合わせた放射線を多方向から集中的に照射する治療法です。適応は原発性肝がんでは直径5cm以内で転移を認めないものや、転移性肝がんでは直径5cm以内、3個以内で、他病巣を認めないものが適応となります。

また、肝機能が保たれており、消化管と距離が離れている必要があります。治療期間は1〜2週間程度で、肝機能の状態や、腫瘍の大きさ・場所等により48グレイ/4回〜60グレイ/10回で治療を行っています。定位照射は高齢者や合併症のため手術ができない人にも施行可能で、良好な治療成績が得られてきている治療方法です。

粒子線治療

陽子線・炭素イオンを用いた粒子線治療は一般的なX線による放射線治療よりも、線量集中性に優れており、周囲の正常組織の障害をさらに減らすことが可能です。また特に炭素イオンを用いた重粒子線治療は生物学的効果がより高く、巨大な腫瘍であっても優れた局所制御が得られています。当院では粒子線治療は施行できませんが、粒子線治療の適応を判断し、治療可能な施設への紹介を行っています。
用語解説
定位放射線治療 : 治療用の放射線を多方向から病巣に対して集中し、正常組織の障害を少なくした放射線の治療方法
重粒子線治療 : 重粒子線を使い、がん細胞だけを集中して照射する治療