九州大学病院のがん診療

膵がん

診断

膵がんは早期診断が難しい病気であり、症状や血液検査だけでは他の病気との区別がつけにくい場合も多いため、通常複数の画像検査を組み合わせて診断します。検査手順や行うことが可能な検査は施設間で多少異なるものの、今日我が国では、日本膵臓学会の「膵癌診療ガイドライン」2022年版に掲載されている膵がん診断のための手順(診断アルゴリズム)に準じて検査が進められます。

膵癌診断のアルゴリズムにあるように、腹痛、背部痛、黄疸、体重減少などの臨床症状や血液検査(膵酵素上昇、腫瘍マーカー上昇)、リスクファクター(家族歴、生活習慣病、膵疾患)、健診や他疾患の精査・経過観察中に発見された膵画像異常所見から膵がんが疑われた場合、腹部超音波検査US)、造影コンピュータ断層撮影(CT)、造影磁気共鳴画像(MRI)・磁気共鳴胆管膵管画像(MRCP)、超音波内視鏡検査EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)、ポジトロン断層撮影(FDG-PET)などの画像検査が追加されます。最終的にこれらの画像を組み合わせ、質的診断がなされます。さらにERCPやEUSを用いて腫瘍から細胞や組織を採取し病理検査を行い、可能な限り膵がんの診断確定を行います。これらの検査は一定の侵襲を伴う検査であるため、当院では高度の専門技術を有する医師に限定して行われます。

当院ではアルゴリズムに示された全検査の施行が可能であり、内科・外科をはじめとした膵がん治療に従事する全専門科が連携し、個々の患者さんに必要な検査を行い、適切に診断を進めていきます。

用語解説

腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称。
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
US : 超音波検査。超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
MRCP : 磁気共鳴胆管膵管造影。MRI検査法のひとつで、造影剤を使わずに膵管・胆管などを強調して撮影する方法
超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
EUS : 超音波内視鏡。超音波診断装置を伴った内視鏡
ERCP : 内視鏡的逆行性膵胆管造影法
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法。