九州大学病院のがん診療

膵がん

放射線治療

切除不能と判断された局所進行膵がんに対して、肝転移などの遠隔転移がない場合、根治的放射線治療の適応となります。また、遠隔転移があっても、原発巣や転移巣による疼痛などの症状があれば、緩和的放射線治療の適応となります。
根治的放射線治療の場合、治療効果を向上させるため、ジェムザールやTS-1などの抗がん剤を同時併用するのが一般的です。
当院では通常、X線を用いた体外照射にて放射線治療を行っています。根治的放射線治療の場合、1日1回、週5回、1回につき1.8〜2Gy(グレイ:放射線量の単位)、総線量50Gy程度を行うのが一般的です。1回の治療に要する時間は10〜15分程度、その中で実際に照射している時間は2〜3分程度で、その間痛みや熱さを感じることはありません。放射線治療の準備のため、治療計画用CTを撮影し、腫瘍の進展形式および周囲の正常臓器の耐容線量を考慮して照射範囲を決定します。重篤な副作用ができるだけ生じないよう、患者さん毎に処方線量やビームの角度・比率などを調節し、線量分布を最適化しています。最近では、症例に応じて強度変調放射線治療や即時適応放射線治療という方法を用いて病変の中心の線量を増加させる治療も行っています。右図に強度変調放射線治療の例を呈示します。また、特に重粒子線治療が有効と思われる場合には、重粒子線治療施設をご紹介させていただくことがあります。

放射線治療の副作用は大きく急性期有害事象晩期有害事象に分けられます。急性期有害事象としては、食欲不振、悪心、嘔吐、全身倦怠感、胃炎、腸炎などがあります。晩期有害事象には肝機能障害、腎機能障害、消化性潰瘍腸穿孔などがありますが、重篤なものはまれです。

用語解説

CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
重粒子線治療 : 重粒子線を使い、がん細胞だけを集中して照射する治療。
急性期有害事象 : 放射線治療期間中および照射終了1ヶ月程度まに発生してくる障害
晩期有害事象 : 治療が終了後約3か月以降に発生してくる障害
消化性潰瘍 : 何らかの原因で胃・十二指腸の粘膜が深く損傷した状態
腸穿孔 : 腸に穴が開くこと