九州大学病院のがん診療

甲状腺がん

診断

症状

前頸部のしこりが最も多い自覚症状で、転移したリンパ節をしこりとして自覚する場合もあります。また、甲状腺周囲の臓器にまで進行している場合は、声のかすれ、呼吸困難や飲み込みにくさなどの症状が出てくることがあります。

検査

診断に有用で最初に行う検査は、頸部超音波(エコー)検査です。エコーで甲状腺がんが疑われる場合には、病理検査(細胞診)や画像検査(内視鏡やCT)を追加します。
甲状腺にできる腫瘍は、多くは良性腫瘍で、がんである可能性は10%未満です。ただし、エコー検査で、辺縁が不整、内部の石灰化などが認められると、甲状腺がんである可能性が高いとされます。また、がんである場合、甲状腺がんの位置や大きさ、および頸部リンパ節の転移の有無も確認できます。このように、エコー検査は、診断にも進行度の判定にも有用です。
もう一つ重要な検査が、細胞診検査です。甲状腺に細い注射針を刺して、結節(しこり)の細胞を採取します。これによって良性か悪性かの判断が行われます。

甲状腺がんと診断されたあとは進行度を確認するために、CT検査で甲状腺周囲の臓器の浸潤の有無や他の部位への転移(リンパ節転移や肺転移など)を確認したり、内視鏡検査で反回神経や食道や気管への浸潤の有無を確認したりします。

最近、甲状腺がんの発生に、遺伝子異常が関与していることがわかってきました。BRAF遺伝子の異常は、乳頭がんの患者さんの60%程度に、RET遺伝子の異常は、遺伝性髄様がんの患者さんでほぼ100%に、遺伝性以外の髄様がんの患者さんでは60%に、乳頭がんの患者さんでは5%程度に確認されます。またNTRK遺伝子の異常は甲状腺がんの患者さんの10%程度にみられます。これらの遺伝子異常は、手術などで採取されたがん組織を用いて検査します。このような検査は、手術やヨード治療で根治できない状態に陥った患者さんに行われます。そしてそれぞれの遺伝子異常が認められた場合、それぞれの遺伝子異常に対する治療薬(いわゆる抗がん剤)が開始されます。

血液検査

用語解説
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置