九州大学病院のがん診療

甲状腺がん

院内がん登録情報

2007年から2018年までに甲状腺がんの診断を受けて九州大学病院で治療を開始された患者さんは495例であり、この患者さんに対して九州大学病院で行われた治療の内容について説明いたします。

図1は、甲状腺がん取扱い規約によって臨床病期:ステージ(治療開始前の病気の進行度)ごとに分類したものです。ステージⅠが全体の52%を占めており、甲状腺がん患者さんの多くがステージⅠの状態で発見されていることがわかります。

また甲状腺癌は初期のうちは自覚症状に乏しいため、半分近くの患者さんは他疾患の経過観察の検査で発見されており、健康診断や人間ドックを含めると64%の患者さんがなんらかの検査で偶発的に発見されていることがわかります(図2)。

ステージ別の治療法(図3)を見るとステージⅠの患者さんのうち94.5%の患者さんは手術を中心とした治療を受けています。ステージⅠの患者さんの多くは‟治癒切除”即ち手術によってがん細胞が全て取り除かれたと判断されており、多くの患者さんが手術を中心とした治療で治癒可能と考えられます。ステージⅡで90.2%、ステージⅢで95.5%の患者さんが手術を受けられています。ステージⅣAでも、98.9%の患者さんで手術を受けています。

原則的に甲状腺がんにおいては臨床病期が進んでいても切除可能であれば治癒切除を目指し、手術を行います。ステージⅣBとステージⅣCでも、姑息手術となりますが、それぞれ60%、79%の患者さんに手術が行われています。また甲状腺癌の場合、外科切除以外の化学療法や放射線治療の効果があまり期待できないことがあるため、周囲臓器(頸部血管、気管、食道等)への浸潤を伴う進行症例に対しても浸潤部位の合併切除を積極的に行っています。

2007-2013年症例の生存曲線(図4)では5年生存率はステージⅠで91.4%、ステージⅡで90.9%、ステージⅢで86.7%程度、ステージⅣAでも74.5%の5年生存率が認められています。一方で治癒切除ができないステージⅣCの患者さんでも63.6%の5年生存率が認められ、他の癌に比べ癌細胞の性質がおとなしく長期間元気でいられる方が多いことがわかります。なお、ステージⅣBの患者さんの5年生存率がⅣCの患者さんより生存率が低いのは対象となる患者さんの数が少ない為と考えられます。また、この生存曲線は全生存率であり、老衰や他の疾患で亡くなった方も含みますので、甲状腺癌が原因で亡くなる方を示す疾患特異的生存率とは異なります。

甲状腺 2007-2018年症例のうち悪性リンパ腫以外治療前・取扱い規約ステージ

取扱い規約について集計を行った。
※症例2:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例3:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数
(症例2、3)

図2 ステージ別発見経緯
(症例2、3)

図3 ステージ別治療法
(症例2、3)

図4 Kaplan-Meier生存曲線
(甲状腺)

用語解説
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍