九州大学病院のがん診療

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甲状腺がん

放射線治療(ヨウ素治療)

しくみ

正常甲状腺は海藻などの食物に含まれるヨウ素を原料として甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺から発生する分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん)も正常甲状腺と同様にヨウ素を取り込む性質を持っています。放射線を出すヨウ素(放射性ヨウ素、131I)を飲むと、胃や腸から吸収され、がんに取り込まれます。その結果、がんの中から放射線を照射することができます。これが甲状腺がんに対するヨウ素治療のしくみです。131Iから放出される放射線のうち、治療に関与するのはベータ線と呼ばれる種類のもので、体内で影響が及ぶ距離は5mm未満です。がんから離れた131Iの集まりが少ない細胞への影響はほとんどありません。したがって、がんに対して強い放射線を、集中的、選択的、持続的に照射することができます。

治療の実際

正常甲状腺が残っていると、がんに取り込まれるはずの131Iが、正常の甲状腺組織に集まってしまい、治療の効果が弱くなってしまうため、原則として甲状腺を全て摘出された患者さんが対象となります。また、がんに131Iを効率よく取り込ませるため、入院前4週間の甲状腺ホルモン剤中止と2週間のヨウ素摂取制限を行います。ただし、一部の患者さんでは甲状腺刺激ホルモン製剤(商品名:タイロゲン)を使用してヨウ素治療を行う場合があります。その際は甲状腺ホルモン剤の中止は不要ですので、放射線科担当医と良く相談してください。

入院後に131Iの入ったカプセルを複数個飲んでいただきます。飲むのは1回のみで、後は吸収されてがんに取り込まれるのを待つだけです。ただし、131Iはベータ線と同時にガンマ線と呼ばれる放射線も放出します。ガンマ線は体の外まで届き、周囲の人へ放射線の影響を与える可能性があるため、131Iを飲んだ直後から体内から出る放射線が基準の値まで減るまでの数日間は特別につくられた個室から原則出ることはできません。通常は4〜5日目でこの個室の外に出ることが可能となります。九州大学病院では北棟3階アイソトープ治療センターに6室のヨウ素治療用の部屋(トイレ付)を完備しています。131Iカプセル服用から5〜6日後にシンチグラフィという検査を行い、がんにヨウ素が集まっていることを確認します。超音波検査CT検査などの各種検査も行い、入院期間は約2週間です。治療はがんへのヨウ素の取り込みが消えるまで、約1年間隔で行われます。

九州大学病院では、1984年度からヨウ素治療を施行しています。最近では年間160〜170人の患者さんがヨウ素治療を受けています(図)。

副作用そのほか

大きく2種類の副作用が知られています。ひとつは甲状腺ホルモン剤を中止することによって生じる甲状腺機能低下症状です。倦怠感、むくみ、体重増加、体温低下などが出現しますが、治療後にホルモン剤を再開すると次第に改善します。もうひとつは、比較的高いレベルの放射線を浴びることによって起きるもので、はき気、あごや首のまわりの腫れ・痛み、味が変わる、つばが出にくくなるなどです。これらのほとんどは一時的なものですが、ヨウ素治療を何度も繰り返した患者さんでは味の変化やつばの出にくさが残る場合もあります。

この治療により脱毛が起きることはありません。131Iから出る放射線が胎児に影響を与えることから、妊婦や妊娠の可能性のある女性ではこの治療を行えません。また、授乳中の女性は断乳していただかなければなりません。ただし、この治療が原因で不妊が生じることはありません。

用語解説
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置