九州大学病院のがん診療

甲状腺がん

外科的治療

前述のように、甲状腺がんには4つのタイプの癌がありますが、いずれのタイプでも、またどのような進行度でも、手術療法が主体となります。なぜなら甲状腺がんの場合、一般的な放射線治療や抗がん剤治療は、効果が乏しいとされるためです。このため根治を目指す場合は、可能な限り手術療法が選択されます。

手術の範囲については、がんが甲状腺だけに留まる場合は甲状腺のみを、リンパ節にまで転移している場合は、甲状腺と同時にリンパ節を郭清する手術を行います。このような甲状腺がんの手術は、術後の機能障害は軽微なものに留まることが多いのですが、がんがとても進行していて、周囲の臓器(反回神経、喉頭、気管、食道など)へ浸潤している場合は、浸潤部位の合併切除が必要となるため、術後に音声や嚥下が障害されることがあります。なお、4つのタイプのがんのうち未分化がんは特殊で、手術を中心として放射線治療や化学療法を組み合わせた治療が計画されますが、進行が速いため現実には治療をすることさえ困難な場合もあります。

最近の新しい手術の方法として、皮膚をほとんど切開せずに小さな傷跡でできる内視鏡下での甲状腺手術も可能となっています。ただし、内視鏡手術は、対象が早期の甲状腺がんのみであり、手術時間も通常の皮膚切開手術の2-3倍かかり侵襲が高くなることが多いため、対象となる症例は限定されています。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法