九州大学病院のがん診療

食道がん

化学療法

食道がんは、消化器から発生するがんのなかでも、特に治療成績の良くない難治性の疾患です。治療法の第一選択は手術療法であり、治癒を目指せる唯一の治療法と考えられてきました。しかし食道がんの手術療法は、開胸、開腹、頸部操作を伴うため、患者さんへの負担は大きく、最も難しい手術の一つと言えます。一方で、他の消化器がんと比べると、放射線や抗がん剤が比較的効きやすいがんであるという特徴もあります。現在、食道がんに対しては、これらの様々な治療方法を組み合わせた集学的治療を行うことが最も重要と考えられており、当院でも各診療科が連携した治療を実施しています。

術前化学療法・化学放射線療法

食道がんの広がりが臨床病期ⅡやⅢ期で切除術を行う場合には、手術の前に5-FUとシスプラチンの併用化学療法(CF療法)を2コース実施することで治療成績が改善することが知られており(JCOG9907試験)、標準治療となっています。術前治療としてこの2剤にドセタキセルを追加した3剤併用療法(DCF療法)や、上記の化学放射線療法を行った場合の治療成績をしらべる臨床試験(NExT試験)に当院も参加しており、現在その結果が解析されています。

化学放射線療法

食道がんの広がりが食道だけの場合や近くのリンパ節のみに限られている場合は、冒頭に述べたように手術療法による切除が一般的です。しかし、がんが周囲の臓器に広がっている場合や、その他の併存疾患の影響で手術療法が選択できない場合には、手術の代わりの治療法として化学放射線療法が選択されます。病巣部に対する放射線照射に加え5-FUとシスプラチンを同時に投与する方法が行われています。

また内視鏡的切除の対象でない臨床病期Ⅰ期の食道がんに対しては、化学放射線療法は手術療法と同等の治療成績が期待できます。臨床病期Ⅱ期や食道がんが隣接する臓器までは広がっていない臨床病期Ⅲ期(T4を除くⅢ期)の場合でも、化学放射線療法は手術療法に次ぐ治療効果が得られることから、手術困難あるいは手術を希望されないⅡ期、Ⅲ期の患者さんへ化学放射線療法を行うこともあります。

遠隔転移を有する臨床病期Ⅳ期の患者さんでも、食道にあるがんのために食べ物や飲み物が飲み込めないなどの症状が強い場合は化学放射線療法を行うことがあります。がんが縮小すれば食事が摂れるようになり、生活の質の向上も期待されます。

化学療法

食道がんが血液やリンパの流れに乗って肺や肝臓などの臓器や食道から離れた部位のリンパ節に転移している場合は臨床病期Ⅳ期となります。この場合には、がんを全て取り除く外科的切除術は難しく、放射線照射も広範囲に行うことは困難です。そのため抗がん剤を用いた全身化学療法を行うことが一般的であり、通常CF療法が行われます。CF療法が効かなかったとき、あるいは副作用や全身状態のためCF療法が行えない場合は、免疫療法のニボルマブやタキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)が有効であることが確認されています。残念ながらこれらの薬剤の効果は十分とは言えず、がんの進行を抑えるための新たな治療法が望まれています。

このように、当院では、がんの広がりの違いや症状・合併症など、患者さん個人の状態に合わせて最も適切な治療方法を選択していくことが重要と考えています。

当院では、これらの治療法よりもさらに有効な治療法、あるいは副作用などの負担がより少ない治療法を開発する目的で多数の臨床試験を実施しています。臨床試験に参加するには、事前に病状・体調等の審査を通過する必要があり、すべての患者さんが参加できるわけではありませんが、担当医から案内があった場合には、医学の進歩のため協力をご一考いただけますと幸いです。

また当院はがんゲノム医療中核拠点病院として、標準治療が効かなくなった患者さんに対してがん遺伝子パネル検査を行い、がんゲノム医療すなわちがん遺伝子の情報に基づいた個別化医療の研究を進めており、食道がんの患者さんにも参加を頂いております。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
集学的治療 : 外科的治療、化学療法、放射線療法などの複数の治療方法を組み合わせて行うがんの治療法
化学放射線療法 : 抗がん剤と放射線を組み合わせて行うがんの治療方法
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期