九州大学病院のがん診療

肺がん

診断

肺がんに特徴的な症状はありませんが、頑固な咳や(血)痰、息切れ、声のかすれ、胸痛などをきっかけに発見されることが多いです。症状がなくても検診などで発見されることもあります。特に喫煙歴のある方は注意が必要です。

胸部X線検査やCTで肺に異常を認めた場合、肺癌を疑う必要がありますが、結核や肺炎でも似たような所見を呈することがあります。そのため、腫瘍マーカーなどの血液検査、痰の細胞検査、経時的変化も考慮して判断しなければならないことも多々あります。それでも診断がつかない場合は、気管支鏡検査や経皮的に針を刺して細胞を調べることになります。がんの診断がつくと、次にがんの広がり(病期)を調べるために、造影剤を使ったCTやMRI超音波検査、FDG-PETといった画像診断法を用い、治療方法(手術、放射線、抗がん剤)について検討を行います。

肺がんの中でも非小細胞肺がんと診断された場合には、治療方針を決定するために、がん細胞に特定の遺伝子異常(EGFR、ALK、ROS1、BRAFなど)があるかどうかを検査します。これらの特定の遺伝子異常を認めた場合には、それぞれに対する分子標的薬を用いた治療が検討されます。各々の遺伝子異常を別々の検査で調べることが出来ますが、最近では、次世代シークエンサーといわれる器械を用いることで一度に複数の遺伝子異常を検査することが可能になっています。またPD-L1というタンパク質の発現ががん細胞中に認められるか調べ、免疫を利用した治療(免疫チェックポイント阻害剤)についての検討を行います。

用語解説

CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法。
分子標的薬 : 癌に関与する遺伝子や遺伝子産物を標的とした薬剤による治療法。
免疫チェックポイント阻害剤 : 免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性化させる。