九州大学病院のがん診療

脳腫瘍

外科的治療

悪性脳腫瘍に対する治療は、悪性リンパ腫や胚細胞腫など一部の腫瘍を除いて、基本的には最大限の外科的摘出術が最優先になります。外科治療の目的は、腫瘍の病理組織診断により確定診断をつけること、腫瘍細胞を減らすこと、さらに周囲組織への圧迫を軽減することにあります。

悪性脳腫瘍の中では、神経膠腫や小児に多い髄芽腫などに関しては、高い摘出度がその後の経過を改善することがわかっています。神経膠腫の約半数を占める膠芽腫(図1)においては、高齢の方に発症することが多いですが、当院では可能であれば年齢に関わらず積極的な摘出術を行う方針で治療をしています。高齢者においても、摘出率が高い症例でより良好な治療成績が得られています(図2)。

図1

図2

図3 ギリアデル:
腫瘍を摘出した後のスペースに置きます

また悪性神経膠腫に対しては、手術で十分な摘出を行った症例に対しては、化学療法薬の徐放剤(ギリアデル)を腫瘍摘出後の断面に留置する(図3)ことで、浸潤した腫瘍細胞に対する治療効果を期待できるようになりました。手術中に迅速病理診断で悪性神経膠腫が確定した症例に使用しています。

可能な限り最大限の摘出を目指す際に、重要な機能を有する部位(運動野、言語野、脳幹など)に存在する腫瘍では重大な機能障害を来たす危険を伴うことになります。我々は、最新の画像処理システムを駆使して、腫瘍と周囲組織との関係を3D画像化して、手術シミュレーションに役立てています。また、術中支援システム(ナビゲーション、運動誘発電位、蛍光診断)を駆使し、機能温存を重視した摘出を目指しています。さらに言語野近傍の腫瘍に関しては、覚醒下手術を行い、その言語機能の温存に努めています。これらの詳細は図4をご覧ください。

図4

一方、悪性リンパ腫、胚腫(ジャーミノーマ)に関しては、摘出の程度とその予後に関係がないことが報告されています。組織学的診断を目的とした手術を行い、確定診断後、速やかに化学療法、放射線療法を開始しています。特に胚腫(ジャーミノーマ)を含め、胚細胞腫瘍に対しては、血液や髄液中の腫瘍マーカーの上昇が確認された場合は手術を行わずに化学療法を開始することもあります。

図5

用語解説
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
神経膠腫 : 脳実質の神経膠細胞から発生した腫瘍の総称
髄芽腫 : 小児の小脳に好発する悪性度の高い腫瘍
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
覚醒下手術 : 患者の意識がある状態で手術を行う方法
胚細胞腫瘍 : 精子や卵子になる前の細胞から発生した腫瘍の総称。良性腫瘍と悪性腫瘍がある
腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称