九州大学病院のがん診療

脳腫瘍

臨床研究

当科では神経膠腫の遺伝子異常に注目して、研究に取り組んでいます。近年、腫瘍の発生や悪性化に関わる遺伝子異常が次々に解明され、脳腫瘍においてもいくつかの特徴的な遺伝子異常が発見されてきています。特にIDH遺伝子の変異と、1、10、19番染色体の欠損(loss of heterozygosity:LOHといいます)が、神経膠腫の予後に関連することが最近の研究で示されました。IDH遺伝子に変異がある症例や、1番染色体短腕(1p)と19番染色対長腕(19q)に同時に欠損が認められる症例(1p/19q LOH)は、治療反応性が高く、予後が良好であることが知られています。逆に、10番染色体の異常は神経膠芽腫(WHO grade4)に特徴的な異常で、この異常を伴う悪性神経膠腫は予後不良であることがわかっています。

当科では悪性神経膠腫症例に対しては、同意のもと全例に遺伝子解析を行い、組織診断の所見とあわせて、治療方針を決定しています。

当科における検討で、神経膠腫では、IDH遺伝子変異と、1p/19qLOHのパターンから3つの遺伝子タイプ(oligo-type, astro-type,およびGBM-type)に分類できることがわかりました。この分類に基づいて、退形成性乏突起膠腫(grade3)の治療成績を検討したところ、各タイプで全く治療反応性が異なり、予後に明確な違いがあることが示されました(図1・2)。また、oligo-typeの症例では、腫瘍が画像上悪性のような症例であっても、術後に化学療法だけで長期生存することがわかってきました(図3)。

図1
図2

図3

このように、遺伝子解析結果を加えることで、より治療反応性を正確に予測できるため、当科では病理組織診断に加え、遺伝子検査結果を踏まえて、治療方針を決定しています。
用語解説
神経膠腫 : 脳実質の神経膠細胞から発生した腫瘍の総称
膠芽腫 : 脳腫瘍の一種。脳腫瘍の中で最も悪性度が高い
退形成性乏突起膠腫 : 主に大脳半球に発生する悪性度の高い腫瘍
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法