九州大学病院のがん診療

脳腫瘍

臨床研究

神経膠腫に対しては、術後に病理診断が確定後、必要に応じて化学療法や放射線治療などの追加治療を行います。化学療法で用いられる抗がん剤は多数あり、これらを単独あるいは複数組み合わせて治療を行っていますが、私たちは病理診断だけではなく、摘出された腫瘍の遺伝子解析を行うことで、腫瘍の薬剤への感受性などを総合的に検討し、個々の患者さんに最も適していると思われる薬剤を選択しています。

具体的には、MGMT遺伝子のメチル化という異常を評価することで、テモゾロミドという薬剤の有効性を予測することができます。九州大学病院の治療成績においても、メチル化のある膠芽腫ではテモゾロミドの使用により治療成績が向上していましたが、一方メチル化のない腫瘍では、アバスチンという血管新生阻害薬と呼ばれる薬剤を積極的に使用することにより治療成績が伸びているという結果が示されました。

他にIDH遺伝子の変異と、1番染色体と19番染色体の共欠失と呼ばれる異常の組み合わせにより、化学療法の有効性を予測することが可能です。九州大学病院では、この2つの異常を伴う神経膠腫では化学療法の有効性が高いため、放射線治療を行わずにニドランによる化学療法単独で治療する方針としており、良好な治療成績が得られています。また、TERT遺伝子の変異や10番染色体の欠失のある神経膠腫は、病理診断に関わらず早期に再発する傾向があることが分かってきたため、初期から放射線化学療法を積極的に行う必要があります。このように、遺伝子メチル化、遺伝子変異、染色体欠失という3つの異常を解析することで、化学療法を区別して行うことが良好な治療成績に繋がることが分かってきました。九州大学病院では先進医療「抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査」を2018年8月より導入して、手術後にこれら全ての遺伝子異常を解析することで、最適な治療を提供できるようになりました(図2)。

また髄膜腫に対しては、再発後に治療が困難な状態になることがあり、そのような患者さんを対象として免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブを投与する臨床試験を慶応大学などと共同で行っています。

図1
図2
用語解説

神経膠腫 : 脳実質の神経膠細胞から発生した腫瘍の総称
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
膠芽腫 : 脳腫瘍の一種。脳腫瘍の中で最も悪性度が高い
髄膜腫 : 髄膜から発生し、脳を圧迫しながら形成する良性腫瘍。
免疫チェックポイント阻害剤 :  免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性