九州大学病院のがん診療

脳腫瘍

院内がん登録情報

現在、脳腫瘍はWorld Health Organization(WHO)の「中枢神経系腫瘍組織分類」第4版(2016年)に基づき分類されています。今回のデータは2007年版にのっとったものですが、九州大学病院脳神経外科では2007年から2015年に785症例の脳腫瘍手術(悪性リンパ腫を除く)を行いました。頻度が多いものは髄膜腫234症例(29.8%)、グリオーマ165症例(21%)、下垂体腺腫122症例(15.5%)、神経症腫(9.8%)です。少し前のデータですが、2009年版脳腫瘍全国集計調査報告によると、本邦における原発性脳腫瘍で発生頻度が高いものは髄膜腫(27.1%)、グリオーマ(26.2%)、下垂体腺腫(18.2%)、神経鞘腫(10.5%)であり、当院は全国集計と同様の傾向でありました。

グリオーマは脳実質内に発生するため、手術に際し、正常脳にできるだけダメージを与えずに十分な摘出をするためには、様々な術中支援システムを必要とします。さらに手術後には放射線および化学療法を行うことが多く、遺伝子解析結果による治療選択が可能である大学病院に多く集まる傾向があります。グリオーマには“膠芽腫”という極めて悪性度が高い腫瘍が半数近く含まれるため、どうしても生存率が低くなる傾向にあります。髄膜腫に関しては、頭蓋底部や“静脈洞”と呼ばれる大血管の周囲に発生した、特に手術が困難な症例が大学病院に多い特徴があります。さらに下垂体腺腫は、内視鏡手術が可能である当院へ多くの患者さんが紹介されます。神経鞘腫はやはり手術の難しさや術中のモニタリングが可能であることを考慮されて、大学病院に集まる傾向にあります。髄膜腫、下垂体腺腫、神経症腫といった良性腫瘍は良好な成績をあげています。その他、悪性リンパ腫は血液内科などと協力して治療するため当科として登録にはあがりませんが、脳神経外科としても多くの患者さんの手術・診療を行っております。

当院には、悪性腫瘍治療のエキスパートである癌治療認定医が脳神経外科に3人所属しています。また、脳神経領域に特化した神経病理医が全ての脳腫瘍病理診断に携わっており、画像診断に関しても、神経系の放射線科グループが担当しています。これらのスタッフに加え、看護師、薬剤師を交えた脳腫瘍部会を週1回開催しており、1症例ずつ適切な治療方針を複数の専門家で検討した上で決定しています。

脳腫瘍 2007-2015年症例のうち悪性リンパ腫以外

※症例2:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例3:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
※図2の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 脳腫瘍組織型
(症例2、3)

図2 Kaplan-Meier生存曲線
(脳腫瘍)

用語解説
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
髄膜腫 : 髄膜から発生し、脳を圧迫しながら形成する良性腫瘍
グリオーマ : 脳実質の神経膠細胞から発生した腫瘍の総称
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
膠芽腫 : 脳腫瘍の一種。脳腫瘍の中で最も悪性度が高い